2026.10.11

コラム

ドローン 果樹防除ガイド2026|みかん・柿の収穫後〜越冬期対策と樹園地で散布する際の注意点

ドローン 果樹防除ガイド2026

10月中旬、水稲の収穫が一段落し、産地ではカンキツや柿、りんごの収穫が最盛期を迎えています。果樹の防除は「収穫前」だけで終わりではありません。むしろ収穫後から落葉・越冬までの管理が、来季の病害虫密度を大きく左右するのが果樹の特徴です。そこで毎年いただくのが「水稲でドローンを使っているが、果樹園でも散布できるのか?」というご相談。結論から言えば「使える場面と、向かない場面がはっきり分かれる」というのが正直なところです。本記事では、果樹でのドローン防除の可否を現場目線で整理し、樹園地特有の注意点、秋冬の作業カレンダー、代行や機体選び、冬のうちに済ませたい整備までをまとめます。

秋〜冬の果樹防除で狙うもの

果樹の秋冬防除は、収穫を守るための防除とは目的が異なります。狙いは越冬する害虫・病原菌の密度を下げ、翌春の初発を遅らせることです。代表的なポイントは次のとおりです。

  • 樹体や粗皮で越冬するカイガラムシ類・ハダニ類の密度低減
  • 落葉や落果、剪定枝など伝染源となる残さの園外持ち出し・処分
  • 収穫後に樹勢が落ちた樹の確認と、来季に向けた土づくり・施肥設計
  • 園内のスギ・ヒノキ林縁や雑草地など、周辺環境からの侵入源の整理

使用する薬剤は、必ずその作物に登録のある薬剤をラベル記載どおりの希釈倍率・散布量・使用時期・使用回数で使ってください。地域によって発生消長も推奨体系も異なるため、都道府県の防除指針やJAの防除暦を確認し、地域の指導に従うことが大前提です。本記事で特定の薬剤を推奨することはありません。

果樹園でドローン散布はできる?できない?

ドローンによる農薬散布は、ラベルの使用方法に「無人航空機」の記載があり、かつその作物に登録がある薬剤であれば実施できます。ここが最初の分岐点です。水稲・大豆・麦に比べると、果樹で無人航空機散布の登録がある薬剤は限られるケースがあるため、計画段階でラベルと最新の登録内容を必ず確認してください。

技術的な面では、ドローンは樹冠の上から少量の薬液を散布するのが基本です。飛助シリーズでも1haあたり液剤8L程度が目安で、スピードスプレーヤ(SS)のように樹冠内部までしっかり濡らす「多量散布」とは思想が異なります。この違いを理解せずに「SSの代わり」と考えると、期待した効果が出ません。

区分 内容
向いている場面 樹高がそろった平坦〜緩傾斜のカンキツ園・柿園での樹冠上面散布/SSが入れない狭い区画・急傾斜地/園地が点在していて移動が多い経営/収穫後の空撮による樹勢・被害・排水の確認
向いていない場面 葉裏・枝幹への密着が必要な防除(ハダニ・カイガラムシの越冬期対策など)/冬期の多量散布を前提とした体系/樹高が高く不ぞろいな老木園/防風ネット・ワイヤー・モノレールが密に張られた園
現実的な使い方 SS・動噴とドローンの併用。樹冠上面の広域処理や緊急時のスポット散布をドローンが担い、密着散布は従来機で行う

果樹でドローンを導入して満足度が高いのは、「防除をすべて置き換えた人」ではなく、散布・運搬・空撮の“一部”をドローンに任せて全体の作業時間を削った人です。野菜類での散布実務は秋冬野菜の防除ガイドでも解説していますので、露地野菜と組み合わせた経営の方はあわせてご覧ください。

樹園地でドローンを飛ばすときの実務チェック

果樹園は水田と比べて障害物が圧倒的に多い環境です。飛行前に次の項目を必ず確認してください。

チェック項目 確認内容
障害物 防風ネットの支柱・ワイヤー、モノレール、灌水チューブの架線、電線、果樹棚。細いワイヤーはセンサーで検知しにくいため目視で把握し、飛行ルートから除外する
風 機体の最大使用風速は8m/s。ただし農薬散布は農林水産省の規定により風速3m/s以下で実施。山あいの園地は吹き下ろし・谷風が変わりやすく、朝夕の無風時間帯を選ぶ
対地高度 傾斜地では樹冠までの距離が一定にならない。区画を細かく分け、斜面方向のルート取りと高度設定を事前に決める
周辺への配慮 隣接園(収穫期の園・有機栽培園)、住宅、水路、通学路、養蜂箱の有無。事前周知と散布記録の作成をセットで行う
法令・申請 農薬散布は危険物輸送・物件投下に該当し、原則として国土交通省の承認が必要。2026年7月14日からドローンの飛行禁止エリアが拡大しているため、計画時に最新の飛行禁止区域を必ず確認する
バッテリー 1バッテリー最大25分、薬剤搭載時は平均17分。1日作業なら最低6本、余裕をみて8本。気温が下がる晩秋は出力が落ちやすいので保温して現場へ

果樹産地の10月〜2月 ドローン活用カレンダー

果樹でのドローン活用は「散布」だけではありません。収穫から剪定までの流れの中で、使いどころを整理しておきましょう。

時期 圃場の作業 ドローンの出番
10月 カンキツ・柿の収穫最盛期、落果・被害果の確認 空撮による樹勢ムラ・倒木・排水不良の記録。収穫コンテナや資材の運搬
11月 収穫後の礼肥・落葉や被害果の処分、越冬防除の計画 登録のある薬剤での樹冠上面散布、粒剤散布装置を使った施肥の省力化
12月 剪定開始、園内整理、資材の片付け 剪定枝・資材の傾斜地運搬(軽助25・森飛15など)。機体は洗浄のうえ年次点検を予約
1〜2月 剪定本番、改植・苗木の準備、来季計画と補助金情報の収集 閑散期の整備・部品交換、国家資格の取得やオペレーター育成、来季の散布計画づくり

とくに傾斜地の多い産地では、防除より先に「運搬」でドローンの効果を実感するケースが少なくありません。剪定枝、肥料袋、収穫コンテナの上げ下ろしは重労働で、ここを機械化するだけで作業人数を減らせます。運搬機のラインナップは製品一覧でご確認ください。

自分で飛ばす? 代行に頼む? 判断の目安

果樹でのドローン活用は、面積と作業頻度で判断が変わります。まずは代行で1回試し、効果と作業性を確認してから購入を検討するのが失敗の少ない進め方です。

当社のオペレーション代行の料金は、農薬散布が約10,000円/回〜(4,000㎡まで)が目安で、4,000㎡を超える分は10a(1,000㎡)あたり1,800円が目安、飛行許可申請費用は込みです。いずれも目安であり、樹園地は傾斜・障害物・園地の分散状況・薬剤の条件などで変動します。正確な金額は現地条件を確認したうえでのお見積りとなりますので、オペレーション代行のページをご覧のうえ、公式LINEからお気軽にご相談ください。

自社導入を検討する場合、マゼックスの主力機は飛助10(アドバンス998,000円/プロ1,248,000円)、飛助15(アドバンス1,200,000円/プロ1,450,000円)が定価の目安(いずれも税別)です。中山間地や園地が点在する経営では、取り回しのよい飛助10が選ばれる傾向があります。なお飛助DXシリーズ・飛助miniは新規販売を終了しており、後継は飛助10のご案内となります(既存機のアフターサポートは継続)。産業機は初めて購入する際にメーカー指定の機体研修の受講が必須です。機種の比較や導入の流れはドローン販売・整備のページでご確認いただけます。

冬のうちに済ませたい整備と資格

散布シーズンが終わる秋冬は、整備の予約が取りやすい時期です。機体の年次点検(年1回)は、国土交通省への飛行許可・承認申請やメーカー保証を受けるための前提条件となる重要な整備で、現行機の点検費用は8万円程度(税別)が目安です。春の防除直前は依頼が集中するため、12〜2月の予約をおすすめします。

バッテリーは耐用の目安が約2年・200サイクル。少しでも膨らみがある場合は使用せず、整備事業所へご相談ください。また、マゼックス製機体には1年目無料のドローン保険(対人対物1億円)が付帯しますが、購入後にメーカーへの申請が必要です。更新時期の確認も冬のうちに済ませておくと安心です。

あわせて、農閑期は国家資格取得のチャンスでもあります。受講料の目安(税込)は二等 初学者385,000円/二等 経験者125,000円、一等 初学者725,000円/一等 経験者425,000円で、本部での開催です。修了審査に合格すると指定試験機関の実地試験が免除されます。人材開発支援助成金の対象となる講習もありますが、適用条件は事業者ごとに異なるため個別にご確認ください。コース内容はコース紹介ページをご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. そもそも果樹にドローンで農薬を散布してよいのですか?

A. 薬剤ごとに判断が必要です。ラベルの使用方法に「無人航空機」の記載があり、かつその果樹に登録がある薬剤であれば使用できます。水稲等に比べて果樹での無人航空機散布の登録は限られる場合があるため、防除暦と最新のラベル・登録内容を必ず確認し、地域の防除指針に従ってください。

Q2. 傾斜のきついみかん園でも飛ばせますか?

A. 飛行自体は可能ですが、対地高度の管理とワイヤー・モノレール・防風ネットなどの障害物把握が前提です。区画を細かく分け、目視できる範囲で飛行経路を設定します。風速3m/s以下という散布条件も、谷風の影響を受けやすい園地では厳守してください。不安がある場合は、まず代行で現地条件を確認するのが安全です。

Q3. ドローンを入れればスピードスプレーヤは不要になりますか?

A. 現時点では置き換えではなく併用が現実的です。樹冠内部や葉裏への密着が必要な防除は従来機が有利で、ドローンは上面散布・緊急時のスポット対応・運搬・空撮で力を発揮します。どちらかに寄せるのではなく、作業全体の時間配分で考えると導入効果を判断しやすくなります。

Q4. 代行を頼みたい場合、いつ連絡すればよいですか?

A. 希望日の2〜4週間前までのご相談をおすすめします。飛行許可・承認の申請や近隣への事前周知に時間がかかるためです。園地の場所・面積・樹種・使用予定薬剤が分かる情報をお送りいただくと、見積りがスムーズです。対応エリアは拠点情報からご確認ください(拠点により提供サービスが異なります)。

Q5. 冬の間、機体はどう扱えばよいですか?

A. 薬液タンク・ノズル・ポンプを十分に洗浄し、乾燥させてから保管します。バッテリーは満充電・完全放電のまま長期保管せず、推奨の保管電圧と温度を守ってください。そのうえで、年次点検と消耗部品の交換をオフシーズンに予約しておくと、春の防除に余裕をもって入れます。

まとめ

  • 果樹の秋冬防除は、越冬する病害虫の密度を下げて来季の初発を遅らせるのが目的。薬剤は登録のあるものをラベルどおりに、地域の防除指針・JAの防除暦を必ず確認する
  • ドローン散布は「樹冠上面の広域処理」に向き、葉裏・枝幹への密着散布や多量散布には向かない。SS・動噴との併用が現実的
  • 樹園地はワイヤー・防風ネット・モノレールなど障害物が多い。風速3m/s以下、目視確保、事前周知と記録作成を徹底する
  • 2026年7月14日からドローンの飛行禁止エリアが拡大。飛行計画時は毎回、最新の禁止区域と必要な申請を確認する
  • 散布代行は約10,000円/回〜(4,000㎡まで)、超過分は10aあたり1,800円が目安。樹園地は条件で変動するため個別見積りを
  • 冬は年次点検(点検費の目安8万円・税別)とバッテリー管理、国家資格取得を進める絶好の時期

他の作物・用途での活用例はコラム一覧でも紹介しています。園地の条件に合うかどうかの判断は、写真や地図を見ながらのご相談が一番確実です。

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