2026.10.10

コラム

ドローン用農薬の選び方2026|無人航空機登録の確認手順と散布量・来季防除計画の立て方

ドローン用農薬の選び方2026

収穫が一段落する10月は、来シーズンの防除を設計し直す絶好のタイミングです。なかでも相談が多いのが「このラベルの農薬、ドローンで撒いてもいいのか?」という素朴な疑問。実は、同じ有効成分でもドローン(無人航空機)での使用が登録されている製品とそうでない製品があり、ここを誤ると適用外使用になりかねません。この記事では、ドローン散布に使える農薬の確認手順、希釈・散布量の考え方、風速や飛行申請などの安全ルール、そして秋冬のうちに組み立てたい来季防除計画の流れまでを、農業ドローン専門店の視点で整理します。

なぜ「秋〜冬」に薬剤選定を見直すのか

防除シーズン中は、目の前の病害虫に追われて「去年と同じ薬剤」を選びがちです。しかし散布シーズンが終わった今の時期なら、収量・品質のデータを見ながら落ち着いて薬剤構成を組み替えられます。加えて、冬のうちに薬剤の方向性が決まっていると、次の3つが前倒しで進みます。

  • 必要な散布回数・面積が読めるため、自分で撒くか散布代行に出すかの判断が早くなる
  • 粒剤散布装置やノズル仕様など、機体側の準備(追加装備・整備)を閑散期に済ませられる
  • JA・防除所の防除暦が出るタイミングに合わせて、薬剤の確保と予約がスムーズになる

機体の年次点検も同じ考え方で、混み合う春前ではなく冬のうちに押さえるのが得策です。点検は国交省への飛行許可・承認申請やメーカー保証の前提条件にもなるため、薬剤選定とセットで計画してください(詳しくはドローン販売・整備のページをご覧ください)。

大原則:ドローンで使えるのは「無人航空機」の登録がある農薬だけ

農薬は、農薬取締法に基づいて作物・対象病害虫・使用方法ごとに登録されています。ドローン散布は「無人航空機による散布」という使用方法にあたるため、ラベルの適用表に無人航空機(無人マルチローター/無人ヘリコプター等)での使用が記載されている製品を、記載どおりに使うのが大原則です。手散布や動力噴霧器用として登録されている製品を、独自判断で濃くしてドローンに入れる、といった運用はできません。

確認の手順(この3ステップで必ず裏取りする)

  1. 製品ラベル・SDSの適用表を見る:作物名/適用病害虫/使用時期/総使用回数/希釈倍数/10aあたりの使用量/使用方法(無人航空機散布の記載)をチェック。
  2. 農薬登録情報提供システム(独立行政法人農林水産消費安全技術センター)で最新の登録内容を確認:登録内容は変更・失効することがあるため、シーズン前に必ず最新版を確認します。
  3. 地域の防除指針・JAの防除暦を確認:都道府県の防除指針や地域の慣行に沿っているか、周辺作物への影響や出荷規格の条件もあわせて確認します。

当社は販売店・散布代行事業者であり、薬剤そのものの推奨はできません。具体的な薬剤選定は必ず、JA・普及指導センター・販売店(農薬管理指導士等)にご相談ください。この記事でも特定の製品名は挙げず、「登録のある薬剤をラベルどおりに」という原則に沿って解説します。

ドローン散布で使われる剤型のタイプと確認ポイント

ドローン散布では、タンク容量と飛行時間の制約から「少ない水量で効かせる」設計が基本になります。代表的なタイプと、選ぶ際に見るべきポイントを整理します。

タイプ 特徴 確認すべきポイント
少量散布向けの液剤(希釈倍数が低いタイプ) 少ない水量で所定量を散布でき、ドローンのタンク容量と相性が良い 無人航空機散布の記載/希釈倍数/10aあたり散布液量
フロアブル・水和剤など懸濁するタイプ 沈降・再懸濁の管理が必要。撹拌と濾過の扱いが重要 ノズル詰まりへの配慮、散布後のタンク・ノズル洗浄手順
粒剤・微粒剤 粒剤散布装置付きの機体(飛助15プロ等)で散布。水の積み込みが不要 装置の対応粒径・散布幅、機体側のオプション有無
肥料・土づくり資材(農薬以外) 秋の追肥や資材散布に活用。農薬とは別の管理 粒の形状・比重による飛散特性、機体の積載重量

粒剤散布装置の有無は機体選定に直結します。機体ごとの仕様は製品一覧で確認できます。なお価格は、飛助15アドバンスが1,200,000円、粒剤散布装置付きの飛助15プロが1,450,000円、飛助10アドバンスが998,000円、飛助10プロが1,248,000円(いずれも税別・2026年8月時点の定価の目安)です。構成や時期によって変わるため、最新の条件は公式LINEでご確認ください。

散布量と作業量の基本:面積から「1日の段取り」を逆算する

薬剤が決まったら、次は作業量の見積もりです。飛助シリーズでは1haあたり液剤8L程度が目安、バッテリーは1本あたり最大25分、薬剤搭載時は平均17分が目安になります。これを踏まえた面積別の概算は次のとおりです(圃場形状・薬量・風況で変動する目安です)。

散布面積 液剤量の目安 作業イメージ 準備のポイント
0.5ha(5,000㎡) 約4L 朝の涼しい時間帯で完結しやすい 予備バッテリーは最低でも複数本
2ha(20,000㎡) 約16L 圃場移動を含めて半日規模 充電器・発電機の電源計画が必要
5ha(50,000㎡) 約40L 1日作業。薬液の調製回数も増える バッテリーは最低6本、余裕を見て8本
10ha以上 約80L以上 複数日または2名体制が現実的 適期を外さない散布順の設計が重要

農薬散布を1日通して行う場合、バッテリーは最低6本、安心なら8本が実務上の目安です。バッテリーの耐用は約2年・200サイクルが目安で、膨らみが出た個体は使用せず整備事業所にご相談ください。冬季の保管管理については洗浄と保管の記事もあわせてご覧ください。

散布計画で必ず押さえる安全・法令の前提

薬剤が適正でも、飛ばし方が適正でなければ事故や苦情につながります。最低限、次の点は計画段階で固めておきましょう。

  • 風速:飛助シリーズの最大使用風速は8m/sですが、農薬散布は農林水産省の規定により風速3m/s以下で実施します。朝夕の弱風時間帯が基本です。
  • ドリフト(飛散)対策:隣接圃場の作物、住宅、水路、養蜂・養魚の有無を事前に確認し、必要に応じて散布区画や時間帯を調整します。近隣への事前周知も実務上は欠かせません。
  • 申請・資格:ドローン操縦そのものに免許は原則不要ですが、農薬散布(危険物輸送・物件投下)や目視外飛行などの特殊飛行は、許可・承認申請や技能証明が必要になる場合があります。
  • 飛行禁止エリア:2026年7月14日から飛行禁止エリアが拡大しています。飛行計画の都度、最新の飛行禁止区域を必ず確認してください。
  • 記録:散布日時・圃場・薬剤名・使用量・風速などの記録は、トラブル時の説明資料にも、翌年の防除設計にも役立ちます。

申請の手間が負担なら、オペレーション代行や飛行申請代行の利用も選択肢です。

秋から春までの「来季防除計画」ロードマップ

時期 やること ポイント
10〜11月 今季の防除結果の振り返り/圃場ごとの被害メモ整理 等級落ち・坪枯れなど、発生箇所を地図に落とす
11〜12月 年次点検・整備の予約/バッテリー本数の見直し 閑散期は予約が取りやすい。点検費は8万円程度(税別・目安)
12〜1月 薬剤構成の検討(登録確認・防除暦の照合) 同一系統の連用を避ける設計は地域指導機関に相談
1〜2月 国家資格取得・機体研修の受講/申請書類の更新 農閑期は受講しやすい。包括申請の期限も確認
2〜3月 散布代行の予約/薬剤の確保/試運転 適期が集中する作物は早めの枠確保が安心

資格や機体研修のスケジュールはドローンスクールとコース紹介をご確認ください。受講料の目安(税込)は、二等 初学者385,000円/二等 経験者125,000円、一等 初学者725,000円/一等 経験者425,000円です。人材開発支援助成金の対象講習もありますが、条件は個別に異なるため公式LINEでご確認ください。

自分で撒くか、散布代行か

薬剤選定まで自分で詰められる方でも、適期が重なる時期は機体1台では回り切らないことがあります。その場合は一部を散布代行に出す「併用」が現実的です。当社の農薬散布代行の料金目安は4,000㎡まで約10,000円/回〜、4,000㎡を超える分は10a(1,000㎡)あたり1,800円(飛行許可申請費用込み・目安)。圃場条件や作物によって変動するため、正確な金額は現地条件をうかがったうえでのお見積りとなります。秋冬野菜の防除時期の考え方は秋冬野菜の防除ガイドもあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 手散布用の農薬を濃くしてドローンで撒いてもいいですか?

できません。希釈倍数や使用方法は製品ごとに登録されており、ラベルに無人航空機での使用が記載されていない製品をドローンで散布することは適用外使用にあたります。必ずラベルと農薬登録情報提供システムで最新の登録内容を確認し、不明点はJA・販売店・普及指導センターにご相談ください。

Q2. ドローンで農薬散布をするのに免許は必要ですか?

操縦そのものに免許は原則不要ですが、農薬散布は危険物輸送・物件投下に該当するため、国土交通省への許可・承認申請が必要になる場合があります。目視外飛行など特殊な飛行形態では技能証明が関わるケースもあります。また、メーカー指定の機体研修は産業機の初購入時に必須です。

Q3. 1日でどれくらいの面積を散布できますか?

圃場形状や移動距離に大きく左右されますが、薬剤搭載時の飛行は1バッテリーあたり平均17分が目安で、1日作業ではバッテリーが最低6本(安心なら8本)必要になります。面積が大きい場合は、適期を外さないよう散布順の設計と、代行の併用を検討してください。

Q4. 冬の間にやっておくべき機体側の準備は?

年次点検(年1回)の予約、バッテリーの状態確認、タンク・ノズルの洗浄状態の確認です。年次点検は飛行許可・承認申請やメーカー保証の前提条件になる重要な整備で、現行機の点検費は8万円程度(税別・目安)。繁忙期前は混み合うため、閑散期の予約をおすすめします。

Q5. 粒剤を撒きたいのですが、今の機体で対応できますか?

粒剤散布には対応する散布装置が必要です。飛助15プロ・飛助10プロは粒剤散布装置付きの仕様があります。既存機へのオプション対応可否は機種・年式によって異なるため、お問い合わせまたは公式LINEで機体情報をお知らせください。

まとめ

  • ドローンで使えるのは、ラベルに無人航空機(マルチローター)での使用が登録された農薬のみ。ラベル→農薬登録情報提供システム→地域の防除指針/JA防除暦の順で必ず裏取りする
  • 薬剤選定と同時に散布量を試算する。1haあたり液剤8L程度、薬剤搭載時の飛行は平均17分、1日作業ならバッテリー最低6本(安心なら8本)が目安
  • 農薬散布は風速3m/s以下で実施。ドリフト対策・近隣周知・散布記録を計画段階から組み込む
  • 2026年7月14日から飛行禁止エリアが拡大。飛行計画のたびに最新の区域と必要な申請を確認する
  • 年次点検は飛行許可・承認申請やメーカー保証の前提条件。閑散期の11〜12月に予約を(点検費8万円程度/税別・目安)
  • 散布代行の料金目安は4,000㎡まで約10,000円/回〜、超過分は10aあたり1,800円(申請費用込み・目安)。正確な金額は現地条件により変動

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