麦作 ドローン活用2026|播種・播種後除草剤・追肥の実務と冬春の飛行注意点


9月中旬を過ぎ、水稲の収穫が進むこの時期から動き出すのが麦作の準備です。中部・近畿では11月前後が小麦・大麦の播種期にあたり、収穫後の圃場乾燥、耕起、排水対策、種子や資材の手配と作業が一気に重なります。そこで「稲の防除で使っているドローンを、麦でも活かせないか」というご相談が毎年この時期に増えます。結論から言えば、麦作はドローンと相性のよい作物です。ただし、播種・除草・追肥・防除のどの工程でも「向く使い方」と「向かない使い方」がはっきり分かれます。この記事では、麦作の作業カレンダーに沿ってドローンでできること・注意点を整理し、自社で飛ばす場合と代行に頼む場合の費用の目安、冬から春にかけての飛行で気をつけるポイントまでまとめます。
なぜ「秋のうちに」麦作×ドローンを検討するのか
麦作は、播種してから収穫までおよそ7〜8か月。作業のヤマが「播種期(11月前後)」「越冬後の追肥(2〜3月)」「出穂期前後の防除(4〜5月)」と分散するのが特徴です。稲作の散布シーズン(6〜8月)とほとんど重ならないため、すでに散布ドローンを持っている経営体にとっては、機体の稼働率を上げやすい作物といえます。
一方で、いまから機体導入を検討する場合は時間の見積りが必要です。産業用ドローンはメーカー指定の機体研修の受講が初購入時に必須で、機体登録・リモートIDの設定、飛行許可・承認申請(農薬散布や目視外など特殊な飛行は申請や技能証明が必要になる場合があります)、保険の手続きも並行して進めることになります。11月の播種期に間に合わせたいのか、2〜3月の追肥から使いたいのか、それとも4〜5月の防除がスタートなのかで、準備の逆算が変わります。機体の仕様や価格の目安は製品一覧もあわせてご確認ください。
麦作の作業カレンダーとドローンの活用可否
地域や品種、作付体系によって時期は前後します。下表は中部地方の一般的な小麦・大麦作を想定した目安として見てください。
| 時期 | 主な作業 | ドローン活用 | ポイント |
| 9〜10月 | 稲刈り後の耕起・排水溝整備・土づくり資材 | ◯(粒剤散布・空撮) | 石灰質資材などの粒剤散布、排水不良箇所の空撮確認 |
| 11月前後 | 播種・覆土・鎮圧 | △(条件付き) | 種子散布は機体・装置の適合確認が前提。覆土・鎮圧は地上作業が必要 |
| 播種後〜12月 | 土壌処理除草剤(粒剤) | ◯ | ドローン散布に適用のある登録薬剤をラベルどおりに |
| 1〜3月 | 追肥(幼穂形成期・止葉期など) | ◎ | ぬかるむ圃場に入らず散布できるのが最大の利点 |
| 3〜4月 | 生育診断・追肥判断 | ◎ | 空撮で生育ムラ・湿害箇所を可視化し施肥設計に反映 |
| 4〜5月 | 出穂期前後の病害防除 | ◎ | 適期が短いため、機体トラブルゼロで臨めるかが勝負 |
| 6月 | 収穫・乾燥調製 | × | 収穫作業はコンバインが主役。倒伏状況の確認に空撮は有効 |
①播種期:種子散布は「条件付き」、粒剤除草剤は使いやすい
ドローン播種をどう考えるか
粒剤散布装置を備えた機体であれば、資材を空から広く撒くこと自体は可能です。ただし麦の種子散布は、粒径や比重、散布装置の適合、必要な播種量の確保、そして播種後の覆土・鎮圧といった前提条件が揃って初めて実用になります。とくに「均一に落ちるか」「必要量を短時間で撒けるか」は装置の仕様次第です。ドローンだけで播種工程が完結するわけではない、という点は最初に押さえておいてください。実際の適合可否は機体と装置の組み合わせで変わるため、検討される場合はお問い合わせまたは公式LINEから、圃場条件と使いたい資材を添えてご相談いただくのが確実です。
播種後の土壌処理除草剤(粒剤)
麦作でドローンの効果が出やすいのは、播種後の土壌処理除草剤の粒剤散布です。トラクタや動力散布機で入ると轍ができやすい時期に、圃場を踏まずに短時間で処理できます。使用する薬剤は必ず、その作物・その散布方法(無人航空機による散布)に登録のあるものを、ラベルの使用方法・使用量・時期のとおりに使ってください。地域の防除指針やJAの防除暦も必ず確認し、迷ったら普及指導センターやJAに確認するのが原則です。
②越冬後の追肥:麦作でドローンが最も活きる工程
2〜3月の追肥は、麦作でドローンのメリットがもっとも分かりやすく出る場面です。この時期の圃場は融雪や降雨でぬかるみやすく、機械が入れば土を練り、根の傷みや後々の作業性悪化につながります。空から撒ければ圃場に入る必要がありません。
粒剤散布装置付きの機体(飛助15プロなど)であれば、粒状肥料の散布に対応できます。散布量の設定は資材の粒径・比重で変わるため、必ず事前に試験散布を行い、実際に落ちた量を確認してから本番に入ってください。粒剤散布の実務手順はコラム一覧にある肥料散布ガイドでも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
なお飛助シリーズの飛行時間は1バッテリーで最大25分、薬剤・資材を搭載した実作業では平均17分程度が目安です。冬場は気温が低くバッテリーの性能が落ちやすいため、想定より短くなる前提でローテーションを組んでください。散布作業を1日行うならバッテリーは最低6本、余裕を見るなら8本という考え方が現場の基本です。
③春の防除:適期が短い病害に「確実に間に合わせる」
麦作の病害防除は、出穂期から開花期という短い適期に合わせて実施する必要があるものがあり、天候待ちで数日ずれるだけで品質に影響します。とくに赤かび病は収穫物の品質に直結するため、地域の防除指針・防除暦に沿った適期防除が重視されます。使用薬剤は登録内容を確認のうえ、ラベル記載どおりの希釈倍率・散布量で使用してください。特定の薬剤名をここで推奨することはしません。必ずお住まいの地域の指針に従ってください。
散布時の風条件も重要です。飛助シリーズの最大使用風速は8m/sですが、農薬散布については農林水産省の規定により風速3m/s以下で実施します。春先は風が強まりやすく、午前の早い時間帯に作業を寄せる段取りが現実的です。ドリフト(飛散)防止のため、隣接作物・住宅・水路との距離、周辺への事前周知も忘れずに行ってください。
④空撮で生育ムラと排水不良を可視化する
麦は湿害に弱く、排水不良の場所ほど生育が劣ります。上から撮った1枚があるだけで、「どこが毎年弱いのか」が一目で分かります。3月の起生期前後に圃場全体を空撮しておけば、追肥量の調整や、次作に向けた明渠・弾丸暗渠の計画にそのまま使えます。空撮・測量の活用はオペレーション代行でもご依頼いただけます。
冬〜春の飛行で必ず押さえる5つのポイント
- 低温とバッテリー:低温下では出力が落ちやすく、飛行時間も短くなります。使用直前まで保温し、膨らんだバッテリーは絶対に使わず整備事業所へ相談してください。バッテリーの耐用は約2年・200サイクルが目安です。
- 風速:農薬散布は風速3m/s以下で実施。機体の最大使用風速8m/sは「壊れない上限」ではなく仕様上の限界値であり、散布可否の基準とは別物です。
- 飛行禁止エリアの拡大:2026年7月14日からドローンの飛行禁止エリアが拡大しています。麦の圃場が対象空域や周辺に該当しないか、飛行計画のたびに最新情報を確認してください。
- 申請と資格:ドローン操縦に免許は原則不要ですが、農薬散布や目視外飛行など特殊な飛行は申請や技能証明が必要になる場合があります。包括申請の有効期限切れにも注意してください。
- 年次点検:機体の年次点検(年1回)は、国土交通省への飛行許可・承認申請やメーカー保証、保険の前提条件となる重要な整備です。現行機の点検費は8万円程度(税別・目安)。春の防除前は依頼が集中しやすいため、稲作が終わる秋冬の閑散期に予約を入れておくのが得策です。点検・修理はドローン販売・整備から、認定整備士がご対応します。
自社で飛ばすか、代行に頼むか:費用の目安
麦作だけのために機体を新規導入するのは、面積次第では割に合わないこともあります。まずは代行で試し、稲作と合わせた年間稼働で採算が合うと判断できてから購入するという順番も十分に現実的です。
| 選択肢 | 費用の目安 | 向くケース |
| 散布代行に依頼 | 約10,000円/回〜(4,000㎡まで。以降1,000㎡ごとに+2,000円。飛行許可申請費用込み/すべて目安) | 面積が小さい、まず効果を確かめたい、人手が足りない年だけ頼みたい |
| 機体を購入(飛助10) | アドバンス998,000円/プロ1,248,000円(税別・目安) | 稲作+麦作で年間の稼働日数が確保できる中小規模経営 |
| 機体を購入(飛助15) | アドバンス1,200,000円/プロ〈粒剤散布装置付〉1,450,000円(税別・目安) | 面積が大きい、粒剤(肥料・除草剤)散布まで自社で回したい |
上記はいずれも目安であり、実際の金額は圃場条件・面積・移動距離・時期、機体の仕様や構成によって変動します。値引きやキャンペーン、下取り、在庫・納期については条件が個別に異なるため、公式LINEでご確認ください。散布代行の依頼時期や見積りの進め方はオペレーション代行のページと、コラムの料金・予約ガイドもあわせてご参照ください。
なお、マゼックス製の機体には1年目無料のドローン保険(対人対物1億円)が付きます(購入後にメーカーへの申請が必要です)。また飛助DXシリーズ・飛助miniは新規販売を終了しており、後継機としては飛助10をご案内しています。既存機のアフターサポートは継続していますので、修理や点検はそのままご相談いただけます。
操縦者の育成も秋冬が狙い目
麦作と稲作を組み合わせると、散布・散粒の作業が年に何度も発生します。1人の操縦者に依存すると、その人が動けない日に作業が止まります。農閑期である11月〜2月は受講しやすい時期で、国家資格対策コースの受講料は二等初学者385,000円/二等経験者125,000円、一等初学者725,000円/一等経験者425,000円(すべて税込・目安、本部のみ開催)です。修了審査に合格すると指定試験機関の実地試験が免除されます。一等はレベル4(有人地帯の目視外飛行)に対応する最上位資格です。人材開発支援助成金の対象講習もありますので、条件は公式LINEで個別にご確認ください。詳細はスクールページをご覧ください。
よくある質問
Q. 麦の播種をドローンだけで完結できますか?
A. 完結はしません。空から種子を撒くこと自体は粒剤散布装置付きの機体で対応できる場合がありますが、機体・装置と種子の適合確認が前提であり、播種後の覆土・鎮圧は地上作業が必要です。「省力化できる工程の一部」と捉え、既存の播種体系とどう組み合わせるかで検討してください。
Q. 冬の追肥はどのくらいの面積を1日で回れますか?
A. 資材の散布量、圃場の形状、移動時間、バッテリー本数で大きく変わります。飛行時間は1バッテリー最大25分、搭載時は平均17分が目安で、冬季は低温で短くなりがちです。1日作業するならバッテリーは最低6本、余裕をみて8本という前提で計画してください。具体的な面積の試算は、圃場図と散布量をお知らせいただければ公式LINEでご相談いただけます。
Q. 稲で使っている包括申請のまま、麦で散布してよいですか?
A. 申請内容(飛行の目的・方法・区域・期間)に麦作での散布が含まれているかを必ず確認してください。期間が満了していたり、条件が異なる場合は改めて手続きが必要です。加えて2026年7月14日から飛行禁止エリアが拡大していますので、圃場が該当しないか最新情報の確認も必要です。申請代行も承っています。
Q. 使う農薬はどう選べばよいですか?
A. 麦作でその散布方法(無人航空機による散布)に登録のある薬剤を、ラベル記載の使用方法・使用量・使用時期のとおりに使用することが原則です。地域の防除指針やJAの防除暦を必ず確認し、判断に迷う場合は普及指導センターやJAにご相談ください。当社から特定の薬剤を推奨することはしていません。
Q. 近くに対応拠点はありますか?
A. 中部・近畿・九州・沖縄を中心に全国に拠点がありますが、拠点によって提供サービスが異なります。散布代行・整備・スクールのいずれをご希望かにより対応拠点が変わりますので、拠点情報をご確認のうえ、公式LINEからお問い合わせください。
まとめ
- 麦作は作業のヤマが稲作とずれるため、散布ドローンの稼働率を上げやすい作物
- もっとも効果が出やすいのは2〜3月の追肥。ぬかるむ圃場に入らずに撒けるのが最大の利点
- 播種後の粒剤除草剤散布も有効。種子散布は機体・装置の適合確認が前提で、覆土・鎮圧は地上作業が必要
- 薬剤は登録のあるものをラベルどおりに。地域の防除指針・JAの防除暦を必ず確認する
- 農薬散布は風速3m/s以下。冬季はバッテリー性能が落ちる前提で本数と時間配分を組む
- 年次点検(費用目安8万円・税別)は飛行許可申請・保険・メーカー保証の前提条件。秋冬の閑散期に予約を
- 2026年7月14日からの飛行禁止エリア拡大に注意し、飛行計画ごとに最新空域を確認する
- 代行は約10,000円/回〜(4,000㎡まで/目安)、飛助10は998,000円〜、飛助15は1,200,000円〜(税別・目安)。個別条件は公式LINEへ