2026.08.21

コラム

ドローン 鳥獣害対策|収穫期のイノシシ・シカ・カラス被害にできること・できないこと2026

ドローン 鳥獣害対策

穂が実り始める8月下旬から収穫までの1か月あまりは、1年でもっとも鳥獣害の被害が表面化する時期です。イノシシに踏み倒された坪、シカに食べられた畦際、カラスやスズメによる食害——せっかくの収量が、収穫直前に一気に削られてしまいます。近年は「ドローンで鳥獣害対策ができないか」というご相談も増えていますが、結論から言えばドローンは万能ではないものの、被害の「見える化」と対策の効率化には非常に有効です。この記事では、農業ドローンの販売・整備・オペレーション代行を行うドローンキングが、収穫期の鳥獣害対策でドローンにできること・できないことを正直に整理し、法令上の注意点と依頼の流れまで解説します。

なぜ鳥獣害は9〜10月に集中するのか

水稲の乳熟期〜糊熟期は、イノシシやシカにとって栄養価が高く食べやすい時期にあたります。山際の圃場から順に侵入され、一晩で数アールが踏み倒されるケースも珍しくありません。さらに秋は山の餌が不安定になる年もあり、里地への出没が増える傾向があります。

  • イノシシ:夜間に山際から侵入。倒伏・泥ぬた場・獣道が残る
  • シカ:畦畔や圃場周縁の食害、広範囲を移動する
  • カラス・スズメ等:出穂後〜収穫直前の穂の食害。果樹・野菜でも被害
  • サル:群れ単位での被害。学習能力が高く追い払いに慣れやすい

対策の基本は「侵入防止(柵)」「環境整備(隠れ場所となる藪の刈り払い)」「個体数管理(捕獲)」の3本柱で、これは行政やJAの鳥獣害対策指針でも共通しています。ドローンはこの3本柱を置き換えるものではなく、精度と省力性を高める道具と考えるのが正しい位置づけです。

ドローンで「できること」:被害の見える化と点検の省力化

1. 上空からの被害状況の把握・記録

地上からでは、稲が倒れている範囲や被害の全体像は正確に掴めません。上空から撮影すれば、被害エリアの形・面積・侵入方向が一目でわかります。共済や行政への被害報告、集落での対策会議の資料としても、日付入りの空撮画像は説得力があります。

2. 獣道・侵入経路の特定

被害箇所から山際に向かって、草が倒れた筋(獣道)が上空からはっきり見えることがあります。どこから入られているかが分かれば、柵の補強箇所や捕獲檻の設置場所を的確に絞り込めます。「柵はあるのに被害が減らない」圃場の多くは、どこか1か所に弱点があります。

3. 電気柵・ワイヤーメッシュ柵の見回り効率化

中山間地では、柵の総延長が数kmに及ぶこともあります。倒木で柵が押し倒されている、草が電線に触れて漏電している、といった異常は、上空からの飛行で短時間に確認できます。台風や大雨のあとの一斉点検には特に有効です。

4. 圃場周縁・耕作放棄地の状況確認

藪化した耕作放棄地は、獣の隠れ場所(潜み場)になります。集落全体を空撮して「どこを刈り払えば見通しが良くなるか」を共有すれば、集落ぐるみの環境整備計画が立てやすくなります。刈り払い後のビフォーアフター記録にも使えます。

5. 赤外線(サーマル)カメラによる出没確認

サーマル搭載機であれば、薄暮時や夜間に獣の熱源を確認できる場合があります。ただし後述のとおり夜間飛行には許可・承認や技能証明の要件が関わるため、実施には事前準備が必要です。生息状況の把握は、捕獲を担う猟友会・行政との連携が前提になります。

6. 「追い払い」への活用(限定的)

飛行音やスピーカー音による追い払いに一定の効果が出る例もありますが、効果の持続には限界があります。詳しくは次章で説明します。

ドローンで「できないこと」:過度な期待は禁物

ここを正直にお伝えするのが、機体を売る側の責任だと考えています。

項目 ドローンでできること ドローンではできない/限界
被害把握 被害範囲・侵入方向の空撮記録、面積の把握 被害の「発生そのもの」は防げない
追い払い 一時的に圃場から離れさせる効果が出る例あり 獣は音や機影に慣れる。恒常的な追い払いは困難
捕獲 檻の設置候補地の選定、見回りの補助 捕獲行為そのものは不可。鳥獣保護管理法上の許可・資格が必要
夜間の監視 機材条件が整えば熱源確認は可能 常時監視は不可。飛行時間はバッテリー制約を受ける
柵の管理 上空からの異常箇所の発見 修理・補強は人手が必要

また、動物を執拗に追い回すような飛行は、動物福祉の観点でも安全面でも推奨されません。パニックになった獣が道路や住宅地へ飛び出すリスクもあります。ドローンは「情報を得る道具」、対策の実行は柵・環境整備・捕獲という役割分担を崩さないことが、結果的に被害低減の近道です。

飛行時に必ず押さえる法令・安全のポイント

特定飛行にあたる場合は申請が必要

鳥獣害の調査飛行は、条件によって航空法上の「特定飛行」に該当します。代表的なのは次のケースです。

  • 夜間飛行(日没後〜日出前)
  • 目視外飛行(山際・林縁で機体を見失う運用)
  • 人・物件との距離30m未満(民家や電線に近い圃場)
  • 人口集中地区(DID)上空

これらは国土交通省への飛行許可・承認申請が必要になる場合があります。ドローンキングではオペレーション代行と併せて飛行申請の代行も承っています。

2026年7月14日から飛行禁止エリアが拡大

2026年7月14日より、ドローンの飛行禁止エリアが拡大されています。中山間地であっても、対象施設の周辺などが新たに規制対象となっている可能性があります。「去年は飛ばせた場所」でも、飛行計画の段階で必ず最新の飛行禁止区域を確認してください。空港等の周辺、150m以上の高度、緊急用務空域なども併せてチェックが必要です。

鳥獣保護管理法との関係

野生鳥獣の捕獲・追い払いには、鳥獣保護管理法や自治体の運用ルールが関わります。捕獲は許可制であり、ドローンで代替できるものではありません。集落での対策は、市町村の鳥獣被害対策担当・農業共済・猟友会・JAと連携して進めるのが原則です。

国家資格があると運用の幅が広がる

夜間や目視外を含む運用を視野に入れるなら、無人航空機操縦者技能証明(国家資格)の取得が有力な選択肢です。二等でも夜間・目視外の限定変更を受けることで、条件によっては手続きが簡素化されるケースがあります。国家資格スクールの受講料の目安(税込)は、二等 初学者385,000円/二等 経験者125,000円、一等 初学者725,000円/一等 経験者425,000円です(本部のみ開催・あくまで目安で、時期や内容により変動します)。人材開発支援助成金の対象となる講習もありますので、条件は公式LINEで個別にご確認ください。詳細はコース紹介もご覧ください。

自分で飛ばす?代行に頼む?費用の考え方

年に1〜2回の被害調査だけなら、まずは代行での空撮から試すのが現実的です。すでに農薬散布用の機体をお持ちなら、同じ機体(またはカメラ搭載機)を活用できる場合もあります。参考として、当社のオペレーション代行の料金目安は以下のとおりです。

メニュー 料金の目安 備考
農薬散布 約10,000円/回〜(目安) 4,000㎡まで。以降1,000㎡ごとに+2,000円(目安)。飛行許可申請費用込み
太陽光パネル洗浄 約10,000円/回〜(目安) 5kWまで。以降1kWごとに+500円(目安)。申請費用込み
山小屋等への物資輸送 約50,000円/回〜(目安) 現場により都度見積り。初回は下見が別途同額
鳥獣害調査・被害空撮 現場条件により個別見積り 面積・地形・夜間の有無・申請要否で変動。公式LINEでご相談ください

上記はいずれも公式サイト掲載の実績に基づく目安であり、圃場条件・アクセス・作業時間帯によって変動します。正確な金額は現地条件を確認のうえお見積りしますので、まずは公式LINEでご相談ください。対応可能なサービスは拠点によって異なりますので、拠点情報もあわせてご確認ください。

収穫期〜秋の段取りカレンダー

  • 8月下旬〜9月上旬:山際圃場を優先して空撮。獣道・柵の弱点を洗い出し、収穫までの応急補強に反映
  • 9月〜10月(収穫期):被害が出たら日付入りで記録。共済・行政報告用に画像を保存
  • 10月〜11月(収穫後):耕作放棄地・藪の刈り払い計画を空撮で共有。秋起こしと同時に環境整備を進める
  • 11月〜2月(農閑期):機体の年次点検、バッテリーの点検・保管、来季の柵更新・補助事業の情報収集、国家資格の受講

なお、機体の年次点検(年1回)は、国土交通省への飛行許可・承認申請やメーカー保証を受けるための前提条件となる重要な整備です。現行機の点検費の目安は8万円程度(税別・目安)で、散布シーズンを終えた秋〜冬は予約が取りやすい時期です。バッテリーは耐用約2年・約200サイクルが目安で、膨らんだものは使用せず、整備事業所へご相談ください。機体整備の詳細はドローン販売・整備のページをご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. ドローンを飛ばすだけでイノシシは来なくなりますか?

A. 一時的に離れることはあっても、恒常的な効果は期待しにくいのが実情です。獣は音や機影に慣れます。ドローンは侵入経路や柵の弱点を見つけるための道具と位置づけ、対策の主軸は柵・環境整備・捕獲に置いてください。

Q2. 夜間に飛ばして獣の様子を確認したいのですが可能ですか?

A. 夜間飛行は特定飛行にあたり、国土交通省への許可・承認や、機体・操縦者の要件を満たす必要があります。加えて2026年7月14日からの飛行禁止エリア拡大にも該当しないか確認が必要です。当社では申請代行とセットでご相談を承っています。

Q3. 農薬散布用の飛助シリーズで鳥獣害の調査もできますか?

A. 機体構成やカメラ搭載の可否によります。散布機は薬剤搭載時の飛行が平均17分程度(1バッテリー最大25分)で、調査飛行では飛行時間や高度の運用が散布時と異なります。お持ちの機体で何がどこまでできるかは、機種と年式を伺ったうえでご案内します。製品一覧もご参照ください。

Q4. 収穫期に鳥の食害が出ています。ドローンで農薬散布はできますか?

A. 鳥害は農薬で対処するものではなく、防鳥網やテグス、環境整備で対応するのが基本です。病害虫防除で薬剤を使う場合は、その作物に登録のある薬剤をラベルの記載どおりに使用し、収穫前日数(PHI)を必ず守ってください。使用薬剤・時期は、地域の防除指針やJAの防除暦を確認のうえ判断してください。散布はドローンでも風速3m/s以下(農林水産省規定)での実施が原則です。

Q5. 集落単位で相談したいのですが対応してもらえますか?

A. 可能です。集落や生産組合単位でまとめて空撮・調査を行うことで、1圃場あたりのコストを抑えられるケースがあります。日程・範囲・費用の目安は現地条件で変わりますので、公式LINEまたはお問い合わせフォームからご連絡ください。関連記事はコラム一覧にまとめています。

まとめ

  • 収穫期(9〜10月)は鳥獣害が集中する時期。ドローンは被害の「見える化」に強い
  • できること=被害範囲の空撮記録、獣道・侵入経路の特定、柵の見回り効率化、藪の把握、条件次第で熱源確認
  • できないこと=恒常的な追い払い、捕獲そのもの、常時監視。対策の主軸は柵・環境整備・捕獲
  • 夜間・目視外・30m未満などは特定飛行。許可承認が必要な場合があり、2026年7月14日からの飛行禁止エリア拡大も必ず確認
  • 代行の料金は現場条件で変動。掲載の金額はすべて目安で、正確な見積りは公式LINEへ
  • 収穫後の農閑期は、年次点検(点検費の目安8万円程度・税別)や国家資格取得を進める好機

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