ドローン飛行日誌の書き方2026|農薬散布の記録・日常点検記録を年末までに整える実務ガイド


稲刈りが終わり、散布シーズンがひと段落する10月。機体の洗浄や保管の準備と同じくらい大切なのに、つい後回しになりがちなのが「記録」です。2022年12月の改正航空法以降、農薬散布のような特定飛行を行う場合は飛行日誌の携行・記載が義務とされています。さらに、農薬の使用記録や年次点検の整備記録は、万一の事故対応や保険請求、翌年の飛行許可・承認申請の場面で「自分を守る証拠」になります。この記事では、農業ドローンのオーナーと散布オペレーター向けに、飛行日誌の構成と書き方、農薬散布特有の記録の残し方、そして散布シーズン後の秋冬に記録を棚卸しする具体的な手順を、ドローンキングの現場目線で整理します。
ドローンの飛行日誌とは?3つの記録で構成される
飛行日誌は、国土交通省の「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」に基づく記録で、次の3つで構成されます。1冊のノートやDIPS2.0のオンライン機能でまとめて管理するのが一般的です。
①飛行記録(いつ・どこで・誰が・何分飛ばしたか)
飛行ごとに、日付、飛行させた者の氏名、離陸・着陸場所、離陸・着陸時刻、飛行時間、飛行の目的、飛行の安全に影響のあった事項(不具合・ヒヤリハット等)を記載します。農薬散布では1日に何度も離着陸しますが、同じ場所・同じ目的で連続する飛行はまとめて記載する運用が認められています。詳細は最新の取扱要領で確認してください。
②日常点検記録(飛ばす前のチェック)
飛行前に行う点検の結果を残すものです。機体の外観、プロペラ、フレーム、通信系統、推進系統、電源・バッテリー、自動制御系統などを点検し、「実施者」「点検場所」「結果」を記録します。散布前の圃場で毎回書くのは大変ですが、ここが空欄だと「点検していない」と見なされかねません。チェック欄だけの簡易様式をクリップボードで持ち歩く、スマートフォンのDIPS2.0から入力する、といった工夫で続けやすくなります。
③点検整備記録(年次点検・修理・部品交換の履歴)
定期的な点検・整備や、部品交換・修理を行ったときの記録です。認定整備士が在籍する整備事業所で年次点検を受けた際の点検結果票や、ノズル・ポンプ・モーター交換の履歴をここに綴じ込みます。機体の年次点検(年1回)は、国土交通省への飛行許可・承認申請やメーカー保証の前提条件となる重要な整備です。現行機の点検費は8万円程度(税別・目安)で、機種や状態、交換部品の有無によって変動します。
| 記録の種類 | 主な記載内容 | 書くタイミング |
| 飛行記録 | 日付・操縦者・離着陸場所と時刻・飛行時間・目的・不具合やヒヤリハット | 飛行当日(その日のうちに) |
| 日常点検記録 | 機体・プロペラ・バッテリー・通信・推進系統などの点検結果、実施者、場所 | 飛行前(毎回) |
| 点検整備記録 | 年次点検の結果、修理・部品交換の内容、実施者・実施日 | 点検・整備・修理を行った都度 |
農薬散布をする人は「飛行日誌が必須」と考える
飛行日誌の記載・携行が義務となるのは、航空法上の特定飛行を行う場合です。特定飛行には、空港等の周辺、高度150m以上、人口集中地区(DID)上空、緊急用務空域、夜間飛行、目視外飛行、人・物件から30m未満の飛行、催し場所上空、危険物の輸送、物件投下が含まれます。
農薬・液剤を搭載して散布する行為は「危険物の輸送」と「物件投下」に該当するため、農業ドローンでの散布は原則として特定飛行です。つまり、農薬散布をする人は飛行日誌が必要と理解しておくのが安全です。記載義務に違反した場合は過料の対象となり得ますし、それ以上に「記録がない」こと自体が事故時に不利に働きます。
なお、飛行日誌は国土交通省の取扱要領で最後に記載した日から2年間の保存が求められています。シーズンごとに捨てず、機体ごとにファイリングしておきましょう。特定飛行に当たらない趣味の飛行でも、記録を残すこと自体は安全管理上おすすめです。
また、2026年7月14日からドローンの飛行禁止エリアが拡大しています。昨年と同じ圃場でも区域の扱いが変わっている可能性があるため、飛行計画の作成時には必ず最新の飛行禁止区域を確認し、確認した事実も日誌の備考欄に残しておくと申請・報告時に役立ちます。
散布記録は「飛行日誌+農薬使用記録」の二本立て
農業ドローンのオペレーターがつまずきやすいのが、「飛行日誌に農薬の内容まで書けばいいのか?」という点です。結論としては、航空法の飛行日誌と、農薬の使用記録(防除記録)は目的が異なるため、二本立てで残すのが実務的です。
農薬の使用記録は、農林水産省が農薬使用者に対して記帳を推奨しているもので、GAP認証や出荷先・JAから提出を求められる場面もあります。使用する薬剤は、必ずその作物に登録のある薬剤をラベル(使用基準)どおりに使い、希釈倍率・使用時期・使用回数は地域の防除指針やJAの防除暦を確認してください。秋冬野菜の防除記事でも触れていますが、散布の記録は翌年の防除設計を組み立てる一番の材料にもなります。
| 区分 | 飛行日誌(航空法) | 農薬使用記録(防除記録) |
| 主な目的 | 飛行の安全管理・機体管理 | 農薬の適正使用の証明・トレーサビリティ |
| 主な項目 | 飛行日時・場所・操縦者・飛行時間・点検結果・不具合 | 圃場名と面積・作物・使用薬剤名と登録番号・希釈倍率・使用量・散布日時 |
| あわせて残したい情報 | 飛行禁止区域の確認結果、許可・承認番号 | 風速・気温・飛散防止の措置、近隣への事前連絡 |
| 保存の考え方 | 最終記載日から2年間(取扱要領) | 出荷先・認証の要件に合わせて保存(3年程度を求められる例も) |
とくに散布代行を請け負う事業者や、集落で機体を共同利用している法人の場合、圃場ごとの散布記録は「誰が・どの圃場に・何を撒いたか」を証明する唯一の手段です。近隣からの問い合わせや、ドリフト(飛散)を疑われた際にも、風速3m/s以下で実施した記録が残っていれば説明がスムーズになります。農薬散布は農林水産省の規定により風速3m/s以下で行うこととされており、機体側の最大使用風速(飛助シリーズは8m/s)とは別の基準である点に注意してください。
記録がものを言う3つの場面
1. 保険の請求時
マゼックス製の農業ドローンには1年目無料のドローン保険(対人対物1億円)が付帯します(購入後にメーカーへの申請が必要です)。保険を使う場面では、事故当日の飛行記録や直前の日常点検記録の提出を求められることがあります。「点検していたが記録がない」は、残念ながら「点検していない」と同じ扱いになりかねません。
2. 事故・トラブルの報告時
人身・物損を伴う事故や、機体の制御不能・紛失などが起きた場合、国土交通省への報告が必要になることがあります。その際に、離着陸時刻、飛行時間、バッテリーの使用本数やサイクル数、直近の整備履歴が揃っていれば、原因究明も再発防止も圧倒的に早く進みます。
3. 飛行許可・承認申請や年次点検の際
包括申請の更新や、新たな飛行形態の承認を取るとき、機体の整備状況や操縦者の飛行実績(総飛行時間)を記載する場面があります。日々の飛行記録を積み上げておけば、申請書の数字を推測で埋める必要がなくなります。散布代行や点検代行を事業として受ける場合は、発注者への実績報告書の作成にもそのまま流用できます。
秋冬にやる「記録の棚卸し」4ステップ
散布シーズンが終わる10月から、農閑期の11月〜2月は、記録を整えるのに最も適した時期です。以下の順で進めると漏れがありません。
| 時期の目安 | やること | ポイント |
| 10月 | 今季の飛行記録・点検記録の欠落チェック | 散布日誌やスマホの写真と突き合わせ、空欄を埋める |
| 10〜11月 | バッテリーの本数・サイクル数・膨らみの記録 | 耐用の目安は約2年・200サイクル。膨らんだものは使用禁止、整備事業所へ |
| 11〜1月 | 年次点検の予約と点検整備記録の更新 | 閑散期は日程が取りやすい。点検費は8万円程度(税別・目安) |
| 1〜2月 | 機体登録・許可承認の有効期限と飛行禁止区域の再確認 | 更新忘れは春の初回散布が止まる最大の原因 |
ステップを踏むと、「記録を直す」だけでなく「来季の課題」が見えてきます。たとえばバッテリーのサイクル数を集計すると、散布1日に必要な本数(最低6本、8本あると安心)に対して手持ちが足りているかが判断できます。飛行時間の記録からは、1バッテリー最大25分・薬剤搭載時平均17分という目安に対して自分の運用がどうかも分かります。機体やバッテリーの追加・更新を検討する材料としても有効です。
よくある記録の不備とその対策
- 操縦者名が空欄…法人や集落営農で複数人が飛ばす場合に多い不備。その日の担当者名を必ず記入します。
- 離着陸時刻がまとめ書き…後からの推定記入は避け、当日中に書く習慣を。スマホのDIPS2.0から入力すると定着しやすいです。
- ヒヤリハットを書かない…GPSの一時的なロスト、警報、着陸のやり直しなども「安全に影響のあった事項」です。翌年の対策の種になります。
- 整備記録が領収書だけ…点検結果票や交換部品の明細を日誌と一緒に綴じ、機体ごとに1ファイルにまとめます。
- 紙とアプリの二重管理…どちらが正本か決めておく。紙で運用するなら、シーズン終了後にPDF化してバックアップを。
なお、記録の付け方や特定飛行の判断に自信がない方は、国家資格の講習で体系的に学ぶのが近道です。国交省認定の登録講習機関であるドローンキングのスクールでは、学科で航空法と記録・報告の実務を扱います。農閑期は受講しやすい時期で、二等・一等のコースの受講料は二等 初学者385,000円、二等 経験者125,000円、一等 初学者725,000円、一等 経験者425,000円(いずれも税込・目安)です。人材開発支援助成金の対象講習もありますので、条件は個別にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 飛行日誌は紙でないとダメですか?
いいえ。国土交通省のDIPS2.0には飛行日誌の機能があり、オンラインでの記録・管理が可能です。紙の様式でも電子でも構いませんが、特定飛行の際は記録を確認できる状態(携行)にしておく必要があります。圃場ではスマートフォンで入力し、シーズン終了後に出力して保管する運用が実務的です。
Q2. 農薬散布の日は、離着陸のたびに1行ずつ書くのですか?
同一の場所・目的で連続して行う飛行は、まとめて記載する運用が認められています。ただし、圃場が変わる、操縦者が交代する、不具合が発生したといった場合は分けて記載します。細かな運用は最新の「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」をご確認ください。
Q3. 国家資格(技能証明)を持っていれば飛行日誌は不要ですか?
いいえ。技能証明の有無にかかわらず、特定飛行を行う場合は飛行日誌の携行・記載が必要です。ドローンの操縦自体に免許は原則不要ですが、農薬散布や目視外飛行などの特殊な飛行は、許可・承認の申請や技能証明が関わる場合があります。資格は「申請が簡略化される」「できる飛行が広がる」ものであり、記録義務を免除するものではありません。
Q4. 散布を代行業者に頼んだ場合、記録は誰が残すのですか?
飛行日誌は飛行させた事業者(操縦者)側が作成します。一方、農薬の使用記録は圃場の管理者として受け取り・保管しておくと安心です。ドローンキングの散布代行では、散布した圃場・面積・使用薬剤などをご報告しています。料金の目安は農薬散布が約10,000円/回〜(4,000㎡まで。超える分は10a=1,000㎡あたり1,800円、飛行許可申請費用込み)ですが、圃場条件により変動しますので、正確な金額は公式LINEでお見積りください。
Q5. 過去の記録が抜けています。今から書いても大丈夫ですか?
記憶や残っている資料(散布メモ、写真の撮影日時、薬剤の購入記録など)をもとに、分かる範囲で補記し、以後は当日記入に切り替えてください。重要なのは、今後同じ抜けを起こさない仕組みをつくることです。お近くの拠点でも、記録様式の整え方や年次点検とあわせた書類整理のご相談を承っています。
まとめ
- 飛行日誌は「飛行記録」「日常点検記録」「点検整備記録」の3構成。特定飛行を行う場合は携行・記載が義務で、最終記載日から2年間の保存が求められます
- 農薬散布は危険物輸送・物件投下に当たるため、原則として特定飛行。散布をする人は飛行日誌が必要と考えましょう
- 航空法の飛行日誌と、農薬の使用記録(防除記録)は目的が違うため二本立てで管理。薬剤は登録のあるものをラベルどおりに、地域の防除指針・JAの防除暦を必ず確認
- 記録は保険請求・事故報告・飛行許可の更新で効いてくる「自分を守る証拠」。年次点検(点検費8万円程度・税別・目安)の結果票も必ず綴じ込みを
- 10月〜2月の閑散期は記録の棚卸しに最適。バッテリーのサイクル数、機体登録や許可の期限、2026年7月14日からの飛行禁止エリア拡大もあわせて確認を
- 様式づくり、点検予約、散布代行の記録まで、個別のご相談は公式LINEへ。料金・納期・在庫は条件により変わるため都度ご確認ください