ドローン 鳥獣害対策2026|収穫期のイノシシ・シカ・カラス対策でできること・できないこと


稲刈りが本格化する9月中旬、全国の中山間地から寄せられる相談で急に増えるのが「イノシシに踏み倒された」「シカが畦畔から入ってくる」「カラスに大豆をやられた」といった鳥獣害の話です。近年は「ドローンで追い払えないか」「上空から監視できないか」というご質問もいただきます。
結論から申し上げると、ドローンは鳥獣害対策の万能の切り札ではありません。一方で、被害状況の把握や侵入経路の特定、防護柵資材の運搬といった「人が動くには手間がかかる部分」では確かな効果を発揮します。この記事では、ドローンキングが全国の現場でお受けしている依頼内容をもとに、収穫期の鳥獣害対策でドローンにできること・できないことを正直に整理します。あわせて、夜間飛行や目視外飛行の承認、2026年7月14日からの飛行禁止エリア拡大など、法令面の注意点もまとめました。
秋の鳥獣害はなぜ集中するのか
9〜11月は、水稲・大豆・果樹・秋冬野菜がいずれも収穫期または肥大期を迎えます。野生鳥獣にとっても越冬前に体重を増やす時期にあたり、山際の圃場は格好の餌場になります。被害が出てから対策を打っても、その年の収量はもう戻りません。だからこそ「今年の被害を正確に記録し、来季の柵・緩衝帯・捕獲計画に反映する」という秋の動きが重要になります。
ここでドローンが役に立つのは、まさにこの「記録と分析」の部分です。地上から歩いて確認すると半日仕事になる山際の圃場も、空撮であれば数十分で全体像を押さえられます。獣道や倒伏の方向、柵の破損箇所といった情報は、上から見た方が圧倒的に分かりやすいのです。
ドローンでできること4つ
1. 被害状況の空撮記録と面積の把握
イノシシによる踏み倒しやヌタ場、シカの食害は、上空から撮影すると被害の輪郭がはっきり分かります。被害面積をおおまかに算出できれば、共済や自治体への報告、集落での対策協議の資料としても使えます。年ごとに同じ画角で撮り続ければ、対策の効果検証にもつながります。
この用途は、収穫後の圃場記録や排水改善の検討とセットで行うと効率的です。空撮・点検の依頼はオペレーション代行でご相談いただけます。
2. 侵入経路・獣道の特定
鳥獣害対策の基本は「どこから入っているか」を突き止めることです。山林と圃場の境界、水路沿い、放棄地の藪など、地上からは見通せない場所でも、上空からは踏み分け道や草の倒れ方が線として浮かび上がります。侵入口が特定できれば、柵の設置位置や捕獲わなの配置を絞り込めます。
なお、赤外線(サーマル)カメラを使った夜間の生息調査も技術的には可能ですが、夜間飛行は国土交通省の承認が必要で、機体・操縦者の要件も変わります。実施を検討される場合は事前にご相談ください。
3. 防護柵・電気柵の資材運搬
鳥獣害対策で最も体力を使うのが、山際や傾斜地への資材運搬です。支柱、ワイヤーメッシュ、バッテリー、ソーラーパネルなどを人力で担ぎ上げる作業は、高齢化した集落にとって大きな負担になっています。
マゼックス社の運搬機「軽助25」や林業向けの「森飛15/25」は、こうした傾斜地への資材輸送を想定した機体です。機体の詳細は製品一覧をご覧ください。自社で機体を持たない場合は、物資輸送の代行という選択肢もあります(料金は後述の目安をご参照ください)。
4. 緩衝帯づくり・畦畔管理との連携
獣を寄せ付けないためには、圃場と山林の間に見通しの良い緩衝帯をつくることが有効とされています。草刈りそのものはドローンでは行えませんが、空撮で藪化している箇所を洗い出し、リモコン草刈り機「Taurus80E」などの導入検討につなげることはできます。畦畔の雑草管理は、来季のカメムシ対策とも直結するテーマです。
ドローンで「できないこと」も正直にお伝えします
問い合わせで最も多いのが「ドローンで追い払えますか」というご質問です。実証段階の取り組みはありますが、実務としてお勧めできる段階ではないというのが、当社の現時点での見解です。理由は次のとおりです。
- 慣れ(馴化)が起きる:音や動きによる追い払いは、繰り返すうちに動物が慣れてしまい、効果が長続きしない例が多く報告されています。
- 飛行時間の制約:産業用ドローンの飛行時間は1バッテリーで最大25分程度(散布機の場合、薬剤搭載時は平均17分)です。常時監視・常時追い払いという運用には構造的に向きません。
- 夜間・目視外の壁:鳥獣の活動時間帯は主に夜間ですが、夜間飛行・目視外飛行はいずれも承認が必要な特殊な飛行です。誰でもすぐに実施できるものではありません。
- 捕獲の代替にはならない:個体数管理は、わな・銃器による捕獲が中心です。ドローンは情報収集を助ける道具であり、捕獲そのものを置き換えるものではありません。野生鳥獣に意図的に接近・威嚇する行為は、鳥獣保護管理法上の問題や事故のリスクも伴います。
- 天候の制約:機体の最大使用風速は8m/sですが、秋は風の強い日も多く、山際は吹き下ろしも発生します。安全マージンを取った運用が前提です。
対策手法別・ドローンの関与度一覧
| 対策手法 | ドローンの関与度 | 具体的な役割・注意点 |
| 被害状況の記録・面積把握 | ◎ 得意 | 空撮で全体像を短時間で記録。年次比較で効果検証にも使える |
| 侵入経路・獣道の特定 | ◎ 得意 | 上空からは踏み分け道が線で見える。柵・わな配置の検討材料に |
| 防護柵・電気柵の資材運搬 | ○ 有効 | 軽助25・森飛など運搬機が活躍。傾斜地・山際で効果大 |
| 緩衝帯・畦畔の管理計画 | ○ 補助的 | 藪化箇所の把握までが役割。草刈り作業自体は別の機械で |
| 夜間の生息調査(赤外線) | △ 条件付き | 夜間飛行の承認・機材・技量が必要。実施前に必ず事前相談を |
| 追い払い・常時監視 | × 期待しすぎない | 馴化・飛行時間・夜間規制の制約が大きい |
| 捕獲(わな・銃器) | × 代替不可 | 法令に基づく捕獲が中心。ドローンは情報提供役に徹する |
飛ばす前に必ず確認する法令・安全のポイント
飛行禁止エリアは2026年7月14日から拡大しています
2026年7月14日より、ドローンの飛行禁止エリアが拡大されました。山際や山林上空であっても、対象施設の周辺などに該当する場合があります。飛行計画を立てる際は、必ず最新の飛行禁止区域を確認してください。「去年は飛ばせた場所だから大丈夫」という判断は禁物です。
夜間飛行・目視外飛行・第三者上空は承認が必要
鳥獣調査は夜間や広範囲の飛行になりやすく、承認が必要な飛行形態に該当しやすい分野です。人口集中地区(DID)上空、夜間、目視外、物件・人から30m未満での飛行などは、いずれも国土交通省への許可・承認申請が前提となります。包括申請を取得済みでも、夜間や目視外が申請範囲に含まれていないケースは珍しくありません。手続きに不安がある方は、飛行申請代行もご利用いただけます。
狩猟期間中の山林飛行は特に慎重に
秋から冬にかけては狩猟が行われる時期に入ります。期間や区域は地域によって異なるため、山林上空での飛行を計画する際は、事前に自治体や地元の猟友会へ一報を入れ、時間帯や場所の調整を行うことを強くお勧めします。安全上の配慮であると同時に、地域との信頼関係を保つうえでも重要です。
機体登録・年次点検は「飛ばせる前提」
機体登録とリモートIDの搭載は必須です。また、年1回の機体の年次点検は、国土交通省への飛行許可・承認申請やメーカー保証、保険適用の前提条件となる重要な整備です。点検費は現行機で8万円程度(税別・目安)で、機種や状態により変動します。散布シーズンが落ち着く秋冬は点検の予約が取りやすい時期でもあります。整備のご相談はドローン販売・整備のページからどうぞ。
費用の目安と依頼の流れ
自社でドローンを持たない場合は、代行という選択肢があります。当社のオペレーション代行における実績例は以下のとおりです(いずれも目安であり、現場条件・移動距離・作業範囲により変動します)。
| メニュー | 料金の目安 | 備考 |
| 物資輸送(山小屋・山林・柵資材など) | 約50,000円/回〜(目安) | 現場により都度見積り。初回は下見が別途同額 |
| 農薬散布 | 約10,000円/回〜(目安) | 4,000㎡まで。以降1,000㎡ごとに+2,000円。飛行許可申請費用込み |
| 空撮・点検(被害調査など) | 現場ごとに見積り | 範囲・撮影内容・成果物の形式で変わります |
依頼の流れは、①公式LINEまたはフォームでご相談 → ②現場の位置・面積・目的をヒアリング → ③飛行可否と申請要否の確認 → ④お見積り → ⑤実施日の調整、という順序です。収穫期は圃場の稼働状況もあるため、日程には余裕を持ってご連絡ください。全国の対応可否は拠点によって異なりますので、拠点情報もあわせてご確認ください。
来季に向けて秋のうちに整えたいこと
鳥獣害対策は単年では完結しません。秋に記録を取り、冬に計画を立て、春の作付け前に柵と緩衝帯を整えるというサイクルが基本です。自社でドローンを運用するなら、農閑期は準備に最適な時期でもあります。
- 10〜11月:被害の空撮記録、侵入経路の洗い出し、集落での共有
- 11〜12月:機体の年次点検・バッテリー点検(膨らんだバッテリーは使用を中止し整備事業所へ)
- 12〜2月:国家資格の取得や機体研修の受講。農閑期は受講スケジュールを組みやすい時期です
- 2〜3月:柵の補修・新設、緩衝帯の刈り払い、資材運搬
飛行の質を上げたい、夜間・目視外の飛行にも対応できるようにしたいという方は、国家資格(一等・二等)の取得も検討に値します。修了審査に合格すると指定試験機関の実地試験が免除され、一等はレベル4(有人地帯の目視外飛行)に対応する最上位資格です。受講料の目安(税込)は、二等 初学者385,000円/二等 経験者125,000円/一等 初学者725,000円/一等 経験者425,000円です。いずれも目安であり、開催時期や受講条件により変動します。人材開発支援助成金の対象となる講習もありますので、条件は個別にご確認ください。詳細は国家資格スクールをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. ドローンでイノシシやシカを追い払うことはできますか?
A. 一時的に逃げることはあっても、繰り返すうちに動物が慣れてしまい効果が持続しにくいとされています。また、夜間飛行の承認や飛行時間の制約もあり、実務的な常時対策としてはお勧めしていません。ドローンは「被害の把握」と「資材運搬」に使い、追い払い・捕獲は柵やわななど従来手法と組み合わせるのが現実的です。
Q2. 赤外線カメラで夜間に生息調査をしたいのですが、すぐできますか?
A. 夜間飛行は国土交通省の承認が必要な飛行形態です。加えて、目視外となる場合はその承認も必要になります。機材・操縦者の要件、飛行エリアの条件によって可否が変わりますので、計画段階でご相談ください。包括申請を持っていても、夜間が申請範囲に含まれていないことがあります。
Q3. 電気柵の資材を山際まで運んでもらえますか?
A. 運搬機を用いた物資輸送の代行に対応しています。料金の目安は約50,000円/回〜(現場により都度見積り、初回は下見が別途同額)です。積載重量、離着陸地点の確保、飛行ルート上の障害物などを下見で確認したうえでお見積りいたします。地域によって対応可否が異なりますので、まずは公式LINEでご相談ください。
Q4. 山の中なら自由に飛ばして大丈夫ですか?
A. いいえ。2026年7月14日から飛行禁止エリアが拡大されており、山林上空でも制限がかかる場合があります。飛行のたびに最新の飛行禁止区域を確認してください。加えて、狩猟期間中の山林では安全確保のため地元への事前連絡が欠かせません。機体登録・リモートID、年次点検といった前提条件も忘れずに整えましょう。
Q5. 鳥獣害対策のために農業用ドローンを買う価値はありますか?
A. 鳥獣害対策「だけ」を目的とした購入は、費用対効果の面でお勧めしにくいのが実情です。農薬散布・肥料散布・空撮・資材運搬といった複数用途で年間を通じて稼働させられるかどうかが判断の分かれ目になります。面積や作型をお伺いすれば、購入・レンタル・代行のどれが合うかをご提案できますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
- ドローンの鳥獣害対策は「追い払い」ではなく、被害の記録・侵入経路の特定・資材運搬が得意分野
- 追い払いは馴化・飛行時間・夜間規制の制約が大きく、捕獲の代替にはならない
- 夜間飛行・目視外飛行は国土交通省の承認が必要。包括申請の範囲も要確認
- 2026年7月14日から飛行禁止エリアが拡大。飛行計画のたびに最新情報を確認する
- 機体登録・リモートID・年1回の年次点検は、飛行許可・保険・保証の前提条件
- 物資輸送代行は約50,000円/回〜(目安・都度見積り、初回下見は別途同額)
- 秋に記録し、冬に点検と資格取得、春に柵と緩衝帯を整えるサイクルで来季の被害を減らす
被害の空撮調査、柵資材の運搬、機体の年次点検、国家資格の受講スケジュールまで、コラム一覧でも関連情報を公開しています。個別の現場条件によるお見積りは、公式LINEが最もスムーズです。