2026.08.30

コラム

ドローン測量・空撮で農地を可視化|収穫後の秋冬に行う圃場記録・排水改善の活用ガイド2026

ドローン測量・空撮で農地を可視化

稲刈りが終わり、圃場から作物が姿を消す秋から冬は、実は「農地を上から記録する」ベストシーズンです。植生が少なく地面がよく見えるため、水はまわりの悪い場所、法面の崩れ、暗渠の詰まりが疑われる湛水跡、獣道の位置などが空から一目で分かります。近年は農地の集積・受託拡大が進み、「どこにどんな形の圃場を何枚持っているのか」を紙の地図と記憶だけで管理するのが難しくなってきました。そこで役立つのが、ドローンによる空撮と写真測量(オルソ画像・標高データの作成)です。本記事では、農地でドローン測量・空撮を使ってできること/できないことを正直に整理し、秋冬に実施するメリット、依頼の流れ、代行料金の考え方(すべて目安)、そして2026年の法規面の注意点までまとめます。

なぜ収穫後の秋冬がドローン空撮・測量の適期なのか

ドローンで農地を撮影する目的が「記録」や「地形の把握」である場合、作物が立っている時期よりも収穫後のほうが精度の高い情報が得られます。理由は次の4点です。

  • 地表面が見える:作物や雑草が地面を覆っていると、写真測量で得られる標高データは「作物の高さ」を拾ってしまいます。収穫後の裸地・刈り株の状態なら、地面の高低差に近いデータが得られます。
  • 湛水・排水不良が見つけやすい:秋雨や初冬の降雨のあとに撮影すると、水が引かない箇所が黒く写り、排水改善が必要なエリアが可視化できます。秋起こしの前に把握できれば、その年の作業計画に反映できます。
  • 作業の邪魔にならない:生育期は薬剤散布や水管理で圃場に人が入りますが、農閑期は立入りが少なく、安全確保がしやすいのも実務的なメリットです。
  • 来季の計画づくりに間に合う:秋冬に撮っておけば、冬の間に地図データを整え、春の作付計画・受託圃場の見積り・補助事業の資料づくりに使えます。

一方で、秋冬は日照時間が短く、太陽高度が低いため影が長く伸びます。撮影は午前10時〜午後2時頃を目安に、影の少ない時間帯を狙うのが基本です。

農地でドローン空撮・測量を使ってできること

「測量」と一口に言っても、目的によって必要な精度も成果物もまったく違います。農業現場で実用性が高いのは、下表のような用途です。

目的 得られる成果物 秋冬に実施する価値
圃場の形状・おおよその面積把握 オルソ画像(ゆがみを補正した真上からの合成写真)、区画ごとの概算面積 受託圃場が増えたときの管理台帳づくり、散布計画の面積根拠に
排水不良・湛水箇所の特定 降雨後の空撮画像、簡易な高低差の分布図 秋起こし・暗渠や明渠の計画、額縁明渠を入れる位置の検討
畦畔・法面・水路の状態記録 高解像度の斜め写真、定点比較用の画像 草が枯れて崩れやコンクリの損傷が見える。補修の優先順位づけ
獣害対策の設計資料 圃場周囲の地形・林縁・獣道が分かる画像 柵の延長距離の見積り、資材の搬入ルート検討に使える
土地の造成・整備前後の記録 施工前後のオルソ画像・地形データ 工事の進捗記録、盛土・切土のおおまかな把握
経営・PR・補助事業の資料 俯瞰写真・動画 法人の会社案内、直販サイト、就農・研修生募集、金融機関向け資料
災害・被害の記録 被害範囲が分かる画像 台風・豪雨後の畦畔崩壊、倒伏・冠水範囲の記録として残せる

いずれも「圃場を歩いて確認する」代わりではなく、歩く前に当たりをつけるための道具と考えると失敗がありません。空から見て気になった場所を現地で確認する、という順番が最も効率的です。

NDVI・生育マップはどう考えるか

マルチスペクトルカメラを使った植生指数(NDVI等)による生育ムラの可視化は、可変施肥や追肥判断への活用が各地で試されている分野です。ただし、指数の値は撮影条件・機材・解析設定によって変わるため、単発の撮影で「この値なら何kg施肥」と決め打ちするのは危険です。まずは同じ圃場・同じ時期に複数年撮って、自分の圃場での傾向を掴むところから始めるのが現実的です。土づくりや肥料設計そのものは、地域の指導機関やJAの指針とあわせて検討してください。

できないこと・専門資格が必要なことを正直に整理する

ドローン測量は万能ではありません。導入検討時に誤解が多い点を先に押さえておきましょう。

  • 境界の確定や登記に使う測量はできません。土地の境界確定や地積更正・分筆などに用いる測量は、土地家屋調査士・測量士等の専門業務です。ドローンの空撮で得られる面積は「概算・参考値」であり、契約や登記の根拠には使えません。
  • 精度は条件次第。写真測量の精度は、飛行高度、撮影のラップ率、対空標識(地上の基準点マーカー)の設置有無、GNSS/RTKの利用、そして地表の見え方に大きく左右されます。高い平面・高さ精度が必要な工事用途では、基準点測量とセットで計画する必要があります。
  • 樹冠下・水面下は見えません。果樹園の樹冠の下、湛水した水面の下の地形は写真からは読めません。
  • 天候に弱い。強風・降雨・濃霧では飛べません。マゼックス飛助シリーズも最大使用風速は8m/sで、実際の運用では余裕を持った判断が必要です。
  • 成果物の作成には時間がかかる。オルソ画像や地形データの作成には撮影後の解析処理が必要で、当日渡しにはなりません。

「どこまでの精度が必要か」が決まると、機材構成も費用も大きく変わります。目的が曖昧なまま高精度の測量を発注すると費用がかさむため、オペレーション代行への相談時は「何を判断するために撮りたいのか」を最初に共有するのがコツです。

依頼の流れと料金の考え方(すべて目安)

空撮・測量は、対象面積、必要な精度、成果物の形式、現場の立地(住宅地の近さ、空港周辺かどうか)で作業量が大きく変わります。そのため、ドローンキングでは都度見積りとしています。参考として、公式サイトに掲載している他メニューの実績例(すべて目安)をあわせてご覧ください。

メニュー 料金の目安 備考
農薬散布 約10,000円/回〜(目安) 4,000㎡まで。以降1,000㎡ごとに+2,000円(目安)。飛行許可申請費用込み
太陽光パネル洗浄 約10,000円/回〜(目安) 5kWまで。以降1kWごとに+500円(目安)。申請費用込み
山小屋等への物資輸送 約50,000円/回〜(目安) 現場により都度見積り。初回は下見が別途同額(目安)
空撮・農地の記録/簡易測量 都度見積り 面積・精度・成果物の形式で変動。公式LINEでご相談ください

上記はいずれも公式サイト掲載の実績例にもとづく目安であり、現場条件・時期によって変動します。正確な金額は現場を確認したうえでのお見積りとなります。値引きやキャンペーン、対応拠点の状況については公式LINEでご確認ください(提供サービスは拠点によって異なります)。

依頼から納品までの一般的な流れ

  1. 目的のヒアリング:何を判断したいのか(排水/面積/記録/PR)を整理。必要な精度と成果物を決めます。
  2. 圃場情報の共有:住所または地図上の位置、区画数、概算面積、周辺の状況(住宅・電線・道路・鉄道・学校など)。
  3. 法規チェックと飛行計画:飛行禁止区域・空港等の周辺、人口集中地区(DID)に該当するかを確認し、必要な許可・承認を申請します。
  4. 現地下見(必要な場合):離着陸場所、立入管理区画の設定、対空標識の設置位置を決めます。
  5. 撮影:風速・降雨・視界を見て当日判断。予備日を設定しておくと安心です。
  6. 解析・納品:オルソ画像や動画、必要に応じて標高データを作成して納品します。

秋冬は日没が早く、悪天候で飛べない日も増えます。「この日に撮りたい」という希望がある場合は、余裕をもって2〜3週間前までにご相談いただくと予備日を含めた計画が立てやすくなります。

自分で飛ばすか、代行に任せるかの分かれ目

すでに農薬散布用のドローンを持っている方から「散布機で圃場の写真も撮れないか」と聞かれることがあります。散布機はカメラ性能や自動撮影の面で測量向きではないため、記録用途には別の空撮機を用意するのが一般的です。判断のポイントを整理します。

項目 自社で実施 代行に依頼
向いているケース 毎月・毎作期に定点で撮りたい/広い受託面積を継続管理 年1〜2回の記録/高い精度が必要/住宅地近くで申請が複雑
必要な準備 機体購入・機体登録・リモートID・保険・操縦技能・解析ソフトの習得 目的と圃場情報の共有のみ
法令対応 自社で飛行許可・承認の申請と記録管理が必要 申請・安全管理を含めて任せられる
コスト構造 初期費用+維持費(点検・バッテリー交換) 実施回数分のみ

自社で継続的に飛ばすなら、操縦者の技能証明取得を検討する価値があります。国家資格(一等・二等)は、修了審査に合格すると指定試験機関の実地試験が免除される仕組みで、二等は基本的な飛行、一等はレベル4(有人地帯の目視外飛行)に対応する最上位資格です。受講料の目安(税込)は、二等 初学者385,000円/二等 経験者125,000円、一等 初学者725,000円/一等 経験者425,000円で、いずれも目安です(本部のみ開催、時期により変動する場合があります)。詳しくはドローンスクールコース紹介をご覧ください。人材開発支援助成金の対象講習もありますが、条件は事業所ごとに異なるため公式LINEで個別にご確認ください。

2026年秋冬に注意すべき法規と安全のポイント

空撮・測量は、農薬散布とはまた違う法規上の論点があります。秋冬に飛ばす前に必ず確認してください。

飛行禁止エリアの拡大(2026年7月14日から)

2026年7月14日から、ドローンの飛行禁止エリアが拡大されました。これまで問題なく飛ばせていた場所が対象になっている可能性があるため、飛行計画のたびに最新の飛行禁止区域を必ず確認してください。「去年ここで撮れたから今年も大丈夫」という判断は禁物です。

許可・承認が必要になる代表的なケース

  • 人口集中地区(DID)上空での飛行
  • 空港等の周辺、150m以上の高度での飛行
  • 目視外飛行、夜間飛行、人・物件から30m未満の距離での飛行、催し場所上空
  • 物件投下(農薬散布を含む)、危険物輸送

操縦そのものに免許は原則不要ですが、上記のような特殊な飛行は申請や技能証明が必要になる場合があります。詳しい実務はコラム一覧の飛行禁止区域・機体登録関連の記事もあわせてご確認ください。

秋冬特有の機体・バッテリー管理

  • 低温でバッテリー性能が落ちる:冬季は飛行時間が短くなる前提で計画を立てます。保管は満充電・完全放電を避け、屋内の安定した環境で。膨らんだバッテリーは使用せず、整備事業所へ相談してください。
  • 年次点検の予約は農閑期に:機体の年次点検(年1回)は、国交省への飛行許可・承認申請やメーカー保証の前提条件となる重要な整備です。散布シーズンを外した秋冬は予約が取りやすい時期です。現行機の点検費用の目安は8万円程度(税別・目安)で、機種・状態により変動します。ドローン販売・整備では認定整備士が対応します。
  • 結露・霜対策:寒い屋外から暖かい室内へ持ち込むと結露します。ケースに入れたまま室温になじませてから開けるのが基本です。

なお、飛行時間の目安として、マゼックス飛助シリーズは1バッテリーで最大25分、薬剤搭載時は平均17分程度です。空撮機も含め、余裕を持ったバッテリー本数の確保が安全運航の前提になります。散布用機体のラインナップは製品一覧をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. ドローンで測った面積は、農地台帳や補助事業の申請に使えますか?

A. ドローンの空撮から算出した面積は概算・参考値です。台帳や公的な手続きで求められる面積は、登記情報や台帳上の数値、あるいは有資格者による測量が根拠になります。ドローンの画像は「現況を説明する補助資料」として添えるのが適切な使い方です。提出書類の要件は必ず窓口にご確認ください。

Q2. 何haくらいから撮影を頼む価値がありますか?

A. 面積の大小より「圃場が分散しているか」「地形の課題があるか」で判断するのがおすすめです。1枚が大きく平坦な圃場なら現地確認で足りる一方、10か所以上に分散した受託圃場や、排水不良・獣害・法面崩れといった課題を抱える現場では、面積が小さくても効果を感じやすいです。費用対効果の考え方は個別条件で変わるため、公式LINEで現場の状況をお聞かせください。

Q3. 撮影に立ち会いは必要ですか?

A. 初回は圃場の境界や注意点(電線、私道、隣接地の関係、犬や家畜の有無など)を共有いただきたいため、可能であれば立ち会いをお願いしています。2回目以降は状況によって不要な場合もあります。

Q4. 雨や雪でも飛べますか?

A. 降雨・降雪・濃霧・強風では飛行しません。安全と成果物の品質の両面で条件が整わないためです。秋冬は天候の変わりやすい時期なので、予備日を含めた日程調整をお願いしています。

Q5. 農薬散布の代行と一緒に頼めますか?

A. 拠点ごとに提供サービスが異なりますが、散布代行と圃場記録を同じ窓口でご相談いただけます。散布計画の面積根拠として空撮画像を使うと、見積りの精度も上がります。ドローン農薬散布の料金や予約の流れについては、既存のコラムもあわせてご覧ください。

まとめ

  • 収穫後の秋冬は、地表が見えるためドローンによる圃場記録・簡易測量の適期。排水不良や法面の傷みが見つけやすい
  • できるのは「現況の可視化と概算把握」。境界確定や登記に使う測量は土地家屋調査士・測量士等の専門業務で、ドローンの数値は参考値
  • 精度は飛行高度・ラップ率・対空標識・GNSSの条件で変わる。目的(何を判断したいか)を先に決めると費用も適正化できる
  • 代行料金は現場条件で変動。農薬散布 約10,000円/回〜、太陽光パネル洗浄 約10,000円/回〜、物資輸送 約50,000円/回〜(いずれも目安)。空撮・測量は都度見積り
  • 2026年7月14日から飛行禁止エリアが拡大。飛行のたびに最新の禁止区域を確認し、DID・目視外・夜間等は許可・承認を取得する
  • 年次点検(年1回)は飛行許可・承認申請やメーカー保証の前提条件。点検費の目安は8万円程度(税別・目安)で、農閑期の予約が取りやすい
  • 自社で継続運用するなら国家資格の取得も選択肢。受講料は目安・税込で二等 経験者125,000円〜、条件はLINEで個別確認

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