ドローンでウンカ防除|トビイロウンカの坪枯れを防ぐ適期と8〜9月の散布実務ガイド2026


出穂を終えた8月下旬から9月上旬は、水稲栽培で最後の山場となる時期です。カメムシによる斑点米と並んで警戒したいのが、株元に潜んで一気に増えるウンカ類。特にトビイロウンカは、気づかないうちに増殖して稲が円形に倒れ込む「坪枯れ」を引き起こし、収量を大きく落とします。しかも坪枯れが見えた時点ではすでに手遅れになりやすく、見回りと適期防除がすべてと言われる害虫です。
本記事では、ウンカ類の発生パターンと防除適期の考え方、そして農薬散布ドローンで株元まで薬剤を届けるための実務ポイントを、機体スペックや散布代行の料金目安とあわせて整理します。夏の終わりの防除を確実に決めて、秋の収穫を守りましょう。
ウンカ類とは?坪枯れが起きるまでの流れ
水稲で問題になるウンカ類は主に3種で、それぞれ加害の性質が異なります。いずれも稲の茎や葉から汁を吸う吸汁性害虫で、体長3〜5mm程度と小さく、株元(地際部)に潜んでいるため上から見ても気づきにくいのが共通の特徴です。
| 種類 | 主な発生・飛来の傾向 | 被害の出方 |
| トビイロウンカ | 梅雨〜初夏に海外から飛来し、圃場で世代を重ねて増加。増殖のピークが出穂後にかかりやすい | 株元で密度が高まり、稲が円形に枯れ倒れる「坪枯れ」。収穫作業にも支障 |
| セジロウンカ | 初期飛来が早く、生育前半に発生しやすい | 吸汁による生育抑制。多発時は葉色低下・すす病の発生 |
| ヒメトビウンカ | 国内で越冬し、畦畔のイネ科雑草からも移動 | 吸汁被害に加え、ウイルス病(縞葉枯病等)の媒介が問題になる地域がある |
坪枯れがやってくる流れはシンプルです。飛来した成虫が産卵し、圃場内で1世代、2世代と数を増やしていく。密度が指数的に増えるため、「まだ少ないから大丈夫」の判断が数週間後の坪枯れにつながるのです。だからこそ、被害が目に見える前の段階で密度を確認し、必要なら手を打つという順番が重要になります。
8〜9月の見回り:株元をのぞく習慣をつける
ウンカの発生確認は、圃場を歩いて稲株をかき分け、地際部を直接のぞき込むのが基本です。稲を軽く揺すると、水面や地際で白っぽい小さな虫が跳ねたり歩いたりするのが見えます。水面に虫の脱皮殻や排泄物によるベタつきが見られることもあります。
- 見る場所:圃場の中央部だけでなく、風下側・畦畔際・過繁茂で株間が詰まった場所を重点的に。多発は局所から始まります
- 見る時間:朝夕の涼しい時間帯だと動きが分かりやすい。晴天の日中は葉陰・株元に潜みます
- 頻度:出穂前後から収穫までは週1回以上。特にお盆過ぎから9月中旬は要注意期間
- 記録:スマホで撮影し、日付と場所をメモ。前回より明らかに増えているかどうかが判断材料になります
発生の多寡や防除の必要性の判断基準(要防除水準)は地域ごとに設定されています。都道府県の病害虫防除所が出す発生予報・注意報、JAの防除暦を必ず確認し、自分の目で見た株元の状況とあわせて判断してください。飛来量は年によって大きく変動するため、「去年は出なかったから今年も大丈夫」という前提は危険です。
防除のタイミングと薬剤選びの考え方
ウンカ防除の要点は「幼虫の多い時期に、株元へ薬剤を届ける」ことです。成虫だけを狙っても次世代が控えており、逆に増殖が進んで密度が高くなってからでは防除効果が追いつきません。防除所の情報で飛来・増殖の山を把握し、坪枯れの兆候が出る前に対処するのが原則です。
薬剤については、必ず水稲のウンカ類に登録がある薬剤を選び、ラベル記載の希釈倍率・使用時期(収穫前日数)・総使用回数を守って使用してください。地域によって特定系統の薬剤に対する感受性低下が報告されることがあるため、系統をローテーションする考え方も重要です。どの薬剤を使うかは地域の防除指針・JAの防除暦、指導機関の助言に従って決定し、本記事では特定の薬剤を推奨しません。
また、ドローン散布では農薬のラベルに「無人航空機による散布」に対応した使用方法(希釈倍率・散布量)の記載があることが前提です。地上防除用の希釈でそのままドローン散布はできません。この確認は毎シーズン必ず行ってください。
ドローンでウンカを防除する際の実務ポイント
ウンカは株元に潜むため、キャノピー(葉層)の上を薬液が通過するだけでは効果が不足しがちです。ドローン散布でしっかり効かせるには、機体のダウンウォッシュ(下向きの気流)で葉を開かせ、薬液を株元へ押し込むイメージで飛ばすことが鍵になります。
飛行高度と速度
高度を上げすぎると気流が拡散し、薬液が上層で止まってしまいます。作物上2m前後を目安に、圃場条件と機体の推奨設定の範囲内で低め・低速に振るのが基本です。逆に低すぎると稲を倒す、薬液が偏るといった問題が出るため、まずは試験散布で被覆状況を確認し、条件を詰めていくのが安全です。過繁茂の圃場では散布ラインの重ね幅(ラップ)をやや多めに取ると、株元への到達が改善します。
風速と時間帯
マゼックス「飛助」シリーズの最大使用風速は8m/sですが、農薬散布は農林水産省の規定により風速3m/s以下で実施します。ドリフト(飛散)による周辺作物・住宅への影響を避けるため、朝方の風が落ち着いた時間帯を選ぶのが実務上の定石です。9月に入ると朝夕の気温が下がり、日中との温度差で局所的な風が出ることもあるため、現場での風速計測は毎回行ってください。
散布量とバッテリー計画
飛助シリーズの目安として、1ha当たりの液剤散布量は8L程度、バッテリー1本の飛行時間は最大25分・薬剤搭載時で平均17分です。1日散布を回すならバッテリーは最低6本、余裕を見て8本が現実的なラインになります。8月下旬〜9月はまだ日中の気温が高く、バッテリーが熱を持ちやすい時期です。連続使用で高温になった電池は休ませ、膨らみが見られるバッテリーは使用を中止して整備事業所へ相談してください。バッテリーの耐用は約2年・200サイクルが目安です。機体・バッテリーの状態確認はドローン販売・整備のページからご相談いただけます。
飛行前の法令確認
農薬散布は無人航空機の飛行のうち「物件投下」「危険物輸送」に該当するため、原則として国土交通省への許可・承認申請が必要です。加えて、2026年7月14日からドローンの飛行禁止エリアが拡大しています。昨年まで問題なく飛ばせていた圃場でも状況が変わっている可能性があるため、飛行計画の段階で必ず最新の飛行禁止区域を確認してください。周辺の学校・住宅・養蜂・有機圃場・水路への配慮と、事前の周知も忘れずに。
散布スケジュールの組み方(8月下旬〜9月)
| 時期 | やること | ポイント |
| 8月中旬〜下旬 | 株元の見回り・発生予報の確認/薬剤とラベル(ドローン散布可否)の確認 | 局所の増加を見逃さない。防除所の注意報が出たら早めに動く |
| 8月下旬〜9月上旬 | 必要と判断した圃場の散布実施(飛行申請・周知を済ませて) | 風速3m/s以下・朝方推奨。株元到達を意識した低め低速飛行 |
| 9月中旬 | 散布後の効果確認・坪枯れ発生箇所の記録 | 収穫前日数を厳守。効果が薄い場合は指導機関へ相談 |
| 収穫後(10〜11月) | 畦畔・雑草管理、来季の防除計画、機体の年次点検予約 | 閑散期は点検枠が取りやすい。翌春の申請・保証の前提になる |
ウンカは収穫直前まで密度が高まる可能性がある害虫です。収穫前日数(使用時期)の制約があるため、「まだ間に合う」と思っていても薬剤が使えなくなる場面が出てきます。見回りの結果を早めに判断へつなげ、散布可能な日程を逆算しておくことが、この時期の最大のリスク管理です。
自分で散布するか、代行に任せるか
ウンカ防除は「発生を確認してから短期間で動く」性質があるため、機体を自分で持っていれば機動力の面で有利です。一方、面積が小さい方や、収穫作業と重なって人手が割けない方には散布代行が現実的な選択になります。
ドローンキングのオペレーション代行では、農薬散布は約10,000円/回〜(4,000㎡まで。以降1,000㎡ごとに+2,000円、飛行許可申請費用込み)が目安です。実際の金額は圃場の形状・障害物・アクセス・薬剤の条件などで変動しますので、目安としてご覧ください。正確な見積りと空き日程は公式LINEでご確認ください。秋は稲刈り前後の依頼が集中しやすいため、発生予報が出た段階で早めにご相談いただくとスケジュールを確保しやすくなります。
自分で運用する場合の機体選びは、圃場面積と作業日数から逆算するのが基本です。マゼックスの主力機は飛助15(アドバンス1,200,000円/プロ〈粒剤散布装置付〉1,450,000円)、飛助10(アドバンス998,000円/プロ1,248,000円)※いずれも税別・定価の目安で、時期や仕様により変動します。飛助DXシリーズ・飛助miniは新規販売を終了しており、後継機は飛助10のご案内となります(既存機のアフターサポートは継続)。ラインナップは製品一覧をご覧ください。産業機の初購入時はメーカー指定の機体研修受講が必須のため、来季から自分で飛ばしたい方は秋冬のうちに準備を始めるのが得策です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 坪枯れが出てから散布しても間に合いますか?
坪枯れが目に見える段階では、その場所の密度は相当高くなっています。周囲への拡大を抑える意味で防除を検討する価値はありますが、枯れてしまった株の回復は望めません。坪枯れを見てから動く防除ではなく、株元の見回りで密度上昇を捉えて動く防除に切り替えることが根本的な対策です。地域の発生予報も併せて確認してください。
Q2. カメムシ防除と同時にウンカも防除できますか?
同時防除の可否や薬剤の組み合わせは、登録内容と地域の防除体系によって異なります。両方に登録のある薬剤かどうか、混用の可否はラベルと防除指針で必ず確認してください。判断はJAや地域の指導機関に相談するのが確実です。なお散布の実務面では、カメムシは穂、ウンカは株元と狙う部位が違うため、飛行高度や重ね幅の設定を変える必要が出る場合があります。
Q3. ドローンだと株元に薬が届かないと聞きました。本当ですか?
飛ばし方次第です。高度を上げて速く飛べば上層で薬液が止まりますが、機体のダウンウォッシュを活かして低め・低速・重ね幅多めで飛べば、株元への到達は大きく改善します。過繁茂で株間が詰まっている圃場は不利になるため、生育管理(適正な施肥・株間)も含めた対策が有効です。設定の詰め方はお問い合わせまたは公式LINEからご相談ください。
Q4. ドローン散布に免許は必要ですか?
ドローンの操縦自体に免許は原則不要ですが、農薬散布のような物件投下・危険物輸送に当たる飛行や目視外飛行などの特殊飛行は、国土交通省への申請や技能証明が必要になる場合があります。国家資格(一等・二等無人航空機操縦士)を取得しておくと申請面で有利になるケースがあり、当社のドローンスクール(国交省認定登録講習機関)では二等 初学者385,000円/経験者125,000円、一等 初学者725,000円/経験者425,000円(いずれも税込・目安、本部のみ開催)で対応しています。人材開発支援助成金の対象講習もありますので、条件は公式LINEで個別にご確認ください。
Q5. 収穫後にやっておくべきことはありますか?
畦畔や周辺のイネ科雑草の管理は、越冬・増殖の場を減らす意味で有効です。機体面では、年次点検(年1回)が国土交通省への飛行許可・承認申請とメーカー保証の前提条件になります。現行機の点検費用は8万円程度(税別・目安)で、春先は予約が混み合うため、農閑期に入る10〜11月の予約がおすすめです。マゼックス製は1年目無料のドローン保険(対人対物1億円)が付きますが、購入後にメーカーへの申請が必要なため、更新時期もあわせてご確認ください。
まとめ
- トビイロウンカは圃場内で世代を重ねて増殖し、坪枯れが見えた時点では手遅れになりやすい。8月下旬〜9月は株元をのぞく見回りを週1回以上
- 薬剤は水稲のウンカ類に登録のあるものをラベルどおりに使用し、地域の防除指針・JAの防除暦・発生予報を必ず確認する
- ドローン散布は「無人航空機による散布」対応のラベル記載が前提。低め・低速・重ね幅多めでダウンウォッシュを活かし株元へ届ける
- 農薬散布は風速3m/s以下で実施。飛行許可・承認申請が原則必要で、2026年7月14日からの飛行禁止エリア拡大も要確認
- 散布量の目安は1ha当たり液剤8L程度、バッテリーは1日6〜8本。高温期は膨らみのある電池を使わず整備事業所へ
- 散布代行は約10,000円/回〜(4,000㎡まで、以降1,000㎡ごとに+2,000円)が目安。秋は依頼が集中するため早めの相談を
- 収穫後は畦畔管理と機体の年次点検(8万円程度・税別・目安)を。点検は飛行許可申請と保証の前提条件になる
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